フンメルのオペラについてのメモ
フンメルのオペラについて作品の整理とメモを残しておきます。
フンメルの残した歌劇で生前に出版されたのは唯一「ギース家のマティルド」,Op.100です。そしてこの歌劇はもっとも人気を得た作品でしょう。
この歌劇は3幕のオペラですが、もともとはドイツ語のジングシュピールでケルトナートル劇場で1811年にウィーンで初演されました。初演時からこのオペラは大絶賛を受け、フンメル本人によるピアノ編曲譜も出版されたほどでした。ワイマール楽長時代の1821年の改訂版はイタリア語の台本に改定し、初版のいくつかの楽曲に手を加えられて、ワイマール、ベルリン、リガで演奏されました。「ギース家のマティルド」はフンメルのオペラの代表作となりましたが、彼の死後より忘れられ、2008年にフランスのランで初録音の計画ともなった演奏が行われるまでレパートリーから外されていました。
軽い喜劇要素を含んだハッピーエンドで終わるオペラですが、その音楽は美しいアリアや重唱、軽快なアンサンブルが散りばめられたとても魅力的な作品で、モーツァルトやロッシーニ、ケルビーニやスポンティーニと類似した性格を持っています。音楽はモーツァルトのコシ・ファン・トゥッテに似ているかな、という個人的な印象を持っています。
現在2008年にフランスのランで復刻再演された演奏が録音され、これが唯一のオペラ全曲盤となっています。
1.現存する演奏可能であろうオペラ
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オペラ『救われた女の感謝』,S.29 ◇1799
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オペラ・ブッファ『ドン・アンキーゼ・カンピオーネ』,S.42 ◇1800
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オペラ・ブッファ『愛の顛末』,WoO.26(S.56) ◇1804
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グランドオペラ『メセニール』,WoO.29(S.61) ◇1805~10
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オペラ『挫折した陰謀』,WoO.27(S.71) ◇1806
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ジングシュピール『ギーズ家のマティルド』,Op.100 ◇1810
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ジングシュピール『これは売家です』,WoO.28(S.90) ◇1812
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オペラ『5つは2つ』,S.95 ◇1813
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ジングシュピール『粉挽き小屋の王子』,S.97 ◇1813
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ジングシュピール『ロバの皮を被った王妃』,S.101 ◇1814
2.パスティッチョや共作的な作品
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ジングシュピール『素晴らしい知らせ』,Op.61(S.103) ◇1814
*モーツァルト、ギロヴェッツ、ヴァイグル、カンネ、ベートーヴェンからの音楽をつなぎ合わせ、フンメルは序曲、四重奏、三重奏2曲を作曲
*序曲のピアノ独奏版はS.148
3.消失してしまっている作品
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ジングシュピール『皇帝の帰還』,Op.69 ◇1814 *消失 ピアノ独奏版のみ現存
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オペレッタ『二人の天才』,S.65 ◇1805 *消失
4.未完や断片
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ジングシュピール『都会と田舎』,S.85 ◇1810*未完
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オペラ『愚かな旅人』WoO.30(S.25) ◇1797*未完
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オペラ・ブッファ『デマゴルゴン』,S.41 ◇1800*断片
*「ドン・アンキーゼ・カンピオーネ」に転用された
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オペラ『アッティラ』,S.163 ◇1825~1827*未完*消失